「脊椎管狭窄症」ってどんな症状?

 

それを知るために、まずは骨のお話です。

 

人の体は、頭からお尻まで連なる「背骨」で支えられています。それらは大事な部分ごとに「頸椎(首)」「胸椎(胸)」「腰椎(腰)」などの名前がついています。固い骨と骨同士が直接ぶつかり合っては骨が削れてしまうため、それぞれの骨の間にはクッションの役目をする「椎間板」があります。尚、この椎間板がずれて飛び出してしまっている状態が、いわゆる「ヘルニア」です。

 

背骨の後ろ(背中側)にはホースのような「脊柱管(せきちゅうかん)」という管があり、その中には神経の大元である脊髄が通っています。余談ですが、我々が背すじをなぞって「背骨に触っている」と思っても、実はそれは背骨から出ている棘部分なのです。背骨から背中側には指のような小さな骨が伸びていて、まさに指を組み合わせるようにして大事な脊柱管を守ってくれています。

 

「脊柱管狭窄症」とは、背骨が何らかの原因で変形し、棘のようなものが出来たり関節がずれたりして脊柱管の中の脊髄を圧迫している状態です。こうなると痛みや歩行障害、さらに症状が進めばマヒが起こることもあるのです。

 

「歩いていると足が痛いが、少し休むと再び歩ける」とおっしゃる患者さんがよくいらっしゃいます。これは歩くことで血液が手足の方に多く流れ、腰への血流が減って酸欠状態になるからです。そこで休憩を取ると再び腰に血液が流れ、歩けるようになるという訳です。これを「間歇性跛行(かんけつせい はこう)」と言い、脊柱管狭窄症の特徴的な症状です。

「自転車に乗っている時は楽」「前かがみで杖をつくと具合がいい」とも言われますが、これは姿勢が前かがみになることで腰の血流が良くなるからです。背筋はシャンと伸ばしている方がいい、と良く言いますが、脊柱管狭窄症の場合は「前かがみ」がポイントです。腰が痛い時によくやってしまう「後ろに腰を反らせる」動きも禁物です!眠るときも大の字ではなく横向きに寝た方が血流の低下が多少予防できます。

 

では日常生活で何に気を付ければ良いでしょう?残念ながら「これさえやれば効果てきめん!」というものは無いのですが、「長時間直立の姿勢を続けない」「背骨と椎間板に任せっきりにせず、周りの筋肉を鍛えて一緒に体重を支えてあげる」が正解です。鍛えると言っても、何も激しい筋トレをする必要はありません。筋力を維持できる程度の無理のない運動をおすすめします。当院では普段の隙間時間でどのような運動をすればいいのか、実演し一緒にやってみながらお伝えしています。例えばテレビを見ていてCMになったらその間だけ運動してみる、というのはどうでしょう?気負わず少しずつ、運動を習慣として取り入れるところから始めてみませんか?